ポーラスター物語

水田からほうれん草畑へ

札幌市の南東部に位置する清田区。昭和40年代の初めまでは、水田を主に果樹や果菜類を作付ける農業地帯でした。昭和45年、国の減反政策が始まると多くの地区で休耕地が目立つようになり、同時に宅地化も進み、農業経営は未だかつてない厳しい状況となりました。
 そのような中、水田からの転作作物として多く作られたのが、ほうれん草、ニンジン、キャベツ、白菜、大根などの野菜類です。当初は順調に販売取扱量を増やし、一部の品目は道外出荷をするまでになりましたが、水稲に比べ、野菜類は天候や病害虫に左右されやすく、価格変動が激しいため、生産者からは不安な声が聞こえるようになりました。
 そこで、生産者の中で栽培技術や販売戦略の情報を共有するために、生産組合の設立が提案され、昭和51年3月、「豊平東部野菜生産組合」が発足しました。
「せっかく生産組合を立ち上げたのだから、組合を代表する作物が必要ではないか――」
設立当初から上がっていた声は徐々に高まり、模索の末に選ばれたのが、ほうれん草でした。
 数ある品目の中からほうれん草が選ばれた理由は、多岐にわたります。需要が多いこと、生育期間が短く畑の利用効率が高いこと、軽量で作業負担が少ないこと、比較的涼しい気候で畑の排水も良く、水源に恵まれた農家が多いことなどが理由でした。
道外では、ほうれん草は秋から春にかけてが旬です。品薄となる6月から8月の間、東京市場では恒常的に高値で取引されていたことから、当初から道外出荷を主眼においてのスタートでした。ちょうどその頃、ホクレンが中心となって道産野菜を積極的に道外へ出荷していこうという取り組みがされており、この地で生産されたほうれん草が、その第1号となりました。

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ブランドほうれん草「ポーラスター」誕生

昭和54年、ほうれん草は連日東京方面へ空輸され、大都会の家庭の食卓に並ぶようになりました。生産者が午前3時までに農協に持ち込めば、翌朝の競りに間に合って取引される。一日平均250~300箱、毎日欠かさずに出荷されるようになったのは、この年からです。
 東京への好調な出荷を受けて、次は府県への出荷が目標のひとつになりました。それに際し、この地から出荷されるほうれん草にふさわしい愛称をと、選ばれたのが「北極星」を意味する「ポーラスター」でした。同時に羊が丘展望台の綿羊を象ったマークも考案され、ここに豊平東部野菜生産組合のブランドほうれん草が誕生しました。
 「ポーラスター」といえば、ほうれん草。道外市場では、ポーラスターがほうれん草の代名詞として使われるほど、その名を轟かせていました。他府県の生産者からも注目を浴び、視察の受け入れも行うほどになりましたが、それでも生産者たちは奢ることなく、生産技術の向上に努めました。生産組合立ち上げ当初から続けている組合員圃場での現地研修会や、他産地への視察も欠かさず行いました。

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努力と研鑽の結晶を未来へ

「ポーラスター」のセールスポイントは、甘みが強くてえぐみが少なく、日持ちが良いこと。その理由は、夏期も冷涼な気候であることが言えます。甘く、えぐみがないほうれん草は、特に女性と子供たちに好まれました。また、生産組合の取り決めによって、どの生産者の圃場でも必ず間引きが行われていました。そのおかげで、ひとつひとつの株張りが良く、葉肉の厚い、日持ちの良いほうれん草となりました。
 ポーラスターがより一層飛躍を遂げる転機となったのが、雨よけハウスの導入です。今でこそ、ポーラスターの圃場といえばハウスの連なる光景が当たり前ですが、当初は、露地栽培が主流でした。もともと雨に弱い作物であるほうれん草。まとまった量を計画的に、継続して出荷するために雨よけハウスは必須であったのです。これにより、安定した生産が可能になりました。
 その後、進む宅地化により、多くの地区で畑が姿を消していきましたが、真栄地区と有明地区ではポーラスターの栽培が続けられ、現在は、滝野地区も加えた約33ヘクタールで作付けされています。努力と試行錯誤を重ねてブランドの確立に奮闘した世代も未だ現役。そして、そんな父親たちの姿をみて育った次の世代が、今、その名を絶やさぬように日々汗を流しています。

平成26年11月、JAさっぽろ清田支店の敷地内に、ほうれん草「ポーラスター」の記念碑が建立されました。“地域の方々に愛されながら、ポーラスターの名前がこの先も耐えぬように”そんな想いを国道沿いから行き交う人たちに語りかけています――。

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ポーラスターのお求めは…

ポーラスターは6月初旬から10月末まで、下記の店頭に並びます。

●ホクレンショップFood Farm平岡公園通り店

住所
札幌市清田区里塚緑ヶ丘5丁目1番10号
電話
Tel:011-882-7520
営業時間
10:00~21:45

●サッポロさとらんど交流館

住所
札幌市東区丘珠町519番地1
電話
Tel:011-787-0223
営業時間
9:00~16:00
(6月上旬〜10月下旬の土・日・月のみ営業)

●八紘学園農産物直売所

住所
札幌市豊平区月寒東2条13丁目1-12
電話
Tel:011-852-8081
営業時間
・4月中旬~11月中旬 10:00~17:00(定休:木)
・11月中旬~4月中旬 10:00~16:00(土・日のみ営業)

●ホクレンくるるの杜

住所
北広島市大曲377番地1
電話
Tel:011-377-8700
営業時間
10:00~17:00(休:祝日以外の月曜)