明治時代、開拓使が置かれた札幌は、北の農業技術を構築する拠点となり、様々な作物・品種が栽培されてきました。故に「サッポロ」と冠のつく品種名の作物が多く誕生し、それらは先人たちの手により札幌の気候や風土に合わせて改良されてきました。時代の流れとともに、形が揃いやすく病気に強いF1品種(一代交配種)が主流となり、姿を消したものもあります。そんな中、今日まで脈々と守り伝えられてきた野菜、それが「札幌伝統野菜」です。
近年、伝統野菜の魅力や食の文化を守り伝えていく重要性が全国的にも見直されるようになりました。JAさっぽろでは、この地の宝といえる5種類の野菜に注目し、平成26年より栽培・普及に取り組んでいます。
札幌黄は、もともとアメリカ産の「イエロー・グローブ・ダンバース」というタマネギが原種と言われています。この品種は、味も形も悪く保存もきかないものでしたが、生産者が自家採種する中で改良を重ね、優良な品種「札幌黄」として確立させました。
肉厚で、加熱すると甘みが増すのが最大の魅力ですが、形が不揃いになりがちで病害虫に弱いことから、次第に病害虫に強く大きさも均一なF1品種(一代交配種)への転換が進み生産量が激減。いつしか「幻のタマネギ」と呼ばれるようになりました。
その美味しさに魅了されるファンは多く、現在は「日本のタマネギ栽培発祥の地」とされる東区を中心に北区・白石区でも生産農家が増えています。
札幌黄物語札幌大球は、大きいものだと直径50㎝、重さ20㎏程度にまで育つこともある特大キャベツ。明治初期にアメリカから3種類のキャベツの種子を輸入し栽培したのが始まりといわれており、交配を繰り返して自家採種を続け、北の大地と食の利にかなった大きなキャベツが誕生しました。
冬場の貯蔵で外側が傷んでも食べられる部分が確保できること、肉厚でしっかりとした食感があることから、昭和初期には、主に漬物用として広く栽培されるようになりました。
その後、漬け物需要の減少や、その重さにより農作業の負担が大きいことから生産量は徐々に減少しましたが、現在、札幌市内では清田区で2戸の生産者が生産を続けています。
インパクトのある見た目やその食感のみならず、甘くて風味が良い味そのものにも関心が高まり、主に漬物加工会社や飲食店などに出荷されています。
サッポロミドリは、雪印種苗株式会社が開発を進め、1974年に種苗登録された札幌発祥の枝豆です。
7月下旬から収穫期を迎える早生品種で、茶色の産毛がなく鮮やかな緑色が特徴。実入りがよく甘みがあるため、国内でもトップクラスの人気品種となっています。現在、札幌市内では清田区や南区で生産されており、収穫時期には札幌市内のスーパー等で販売される他、提携する飲食店でも提供されています。
なんといっても、冷凍ではなく採れたての旬の味覚を味わえるのが札幌産サッポロミドリの大きな魅力です。
札幌大長ナンバンは、明治中期に岩手県南部地方から導入された種が、北海道の気候と風土に適するように変化を遂げた品種です。
現在、札幌市内では清田区・豊平区・南区で生産されています。12cmほどの大きさに育ち、辛みは強めで、熟すと濃紅色に変化しますが、緑色のものだけが出荷されます。ナンバンを使用した北海道・東北の郷土料理に「三升漬」があります。
ナンバンと麹、しょう油をそれぞれ一升ずつの分量で漬け込むことからその呼び名がついたといわれ、ご飯のおかずとしてはもちろん、調味料の代わりとしても重宝する一品です。
北海道のゴボウ栽培は、明治時代に始まったとされています。
当時栽培されていた直根で白茎の品種を「札幌」の呼称で定着させたことが、札幌白ゴボウの由来といわれています。
掘りたてだと他の品種に比べて皮や果肉が白く、豊かな香りと歯ごたえが良いのが特徴です。現在、札幌市内では清田区・北区で生産されており、秋に収穫・出荷される他、越冬させたゴボウは春先にも出荷しています。
生産者直売所を中心に札幌市内のスーパー等で販売される他、産地の近隣の地区を中心に学校給食にも使用されています。
札幌大球(キャベツ)と札幌黄(タマネギ)は、食の世界遺産「味の箱舟」に登録されています。
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