札幌黄の伝統を絶やさぬために「変えない努力」と「変えていく努力」

北札幌地区組合員

坂東 拓也さん

札幌近郊に位置する江別市角山。そこに坂東拓也さん(北札幌地区組合員)家族が経営するヴェール農場がある。倉庫内には近代的な農機具が並ぶが、ひときわ目立つのは手動式木製唐箕とうみ (似内式)。驚く事に今なお現役で“札幌黄”玉ねぎの種の選別に使用されている。

「いつから使用しているかわからないけど、同じものが札幌村郷土記念館に展示されていますよ。ハンドルを回すとゴミや軽い種は風で飛ばされ、重みのある良い種だけが残ります。これを何度か繰り返して種を選りすぐり、コーティングをして翌年の春に植えます」

一見簡単そうに見えるが一定の回転数を保つのが難しく、種の品質が翌年の生育に直結するため、とても大事な作業の一つだ。良い種を取るためには、前年収穫した玉ねぎから良形で芽出しの遅い物を選抜して春に植え、ネギ坊主の花を咲かせて採種する。

明治時代から自家採種を繰り返し“坂東家の札幌黄”を代々受け継いできた一方、坂東さんは最近注目のJGAP認証を平成21 年に早期取得。品質向上のためセンサー選別を導入するなど、先進的な取り組みも積極的に行なっている。

「僕は明治から続く農家の6代目になります。先祖代々作り続けている札幌黄を自分の代で終わらせるわけにはいかないので、古い技術と新しい技術を融合させながら、将来に残すことを大切にしていきたいですね」

古き良き伝統を変えない努力と新技術を取り入れ変えていく努力、2つの努力が調和し、“札幌黄”は未来へと受け継がれる。