安全・安心を求めて地域の米づくりを担うもっと伝えたい!米は日本になくてはならないもの

石狩花畔地区組合員

林 太一さん

石狩花畔地区で、代々農業を営んできた。祖父が分家し、3代目にあたる。30歳で経営を継承し、着実に規模を広げてきた。今や地区でも指折りの面積を耕作する若手生産者として、地域から頼られる存在である林太一さんの、米作りにかける想いに迫る。

YESイエスcleanクリーン」で
安全・安心を

旧JAいしかりから提案されたのは、北海道独自の栽培基準制度「YES!clean」。農薬・化学肥料を減らして栽培した農産物に「YES!clean」のマークを付す制度で、消費者には安全・安心であるが、生産者にとっては莫大な労力が必要とされる。

「まずは肥料の量に驚きました。衝撃的な少なさに、本当に収穫できるのかと」

不安に思いながらも土壌診断を受けた結果は、基準量の堆肥で充分作付可能というもの。それは代々この土地で、土壌を気遣いながら稲作を営んできた賜物だった。

無農薬栽培とは違い、指定された農薬の使用は許されるが、回数や使用量等に細かい制約がある。品種や土壌に合わせた防除の工夫も必要だ。

「それでも続けるのは、安全・安心な米を届けたいから」

収穫まで毎日が
観察の日々

4月上旬、播種前に種籾を消毒する。病害の多くは種籾に潜んでいるからだ。YES!cleanの一環として、薬剤を使わずお湯で消毒する温湯消毒に切り替えた。

温湯消毒とは、網目の袋に入れた種籾を10分間60度のお湯に漬ける方法だ。所有していた機械では一度に8キログラム分しか行なえず、手間と時間をかけて560キログラムもの種籾を消毒してきた。思案の末、一昨年からはJAの行なう営農サポート事業への作業委託に切り替えたことで、空いた時間は他の作業を行なうことにした。

「昔から苗半作と言われます。苗の出来によって作柄の半分が決まるという喩えですが、毎日見回り、よく観察することが良い作物を作る第一歩です」

中でも籾まき時期が特に重要。収穫量に直に影響するので、苗の管理は非常に気を遣う。収穫までは毎日が観察の日々。水温や水量、雑草に害虫、生育状況など、管理を怠らないことが大切だと話す。

家の周囲には、さまざまな機械がある。機械の不調は、作業の進捗に影響する。簡単な機械修理は自分でするそうで、それは父親の影響によるものだという。

「以前は、父とよくスノーモービルで山に出かけていたのですが、壊れた時には自分で直していました。若い頃にアルバイトをしていた、石狩渡船場の造船場や鍛冶屋さんで覚えたそうです」

器用に直す父の姿から、見よう見まねでそのスキルを学び、今では溶接もこなす。

水田のほとんどは泥炭地で地盤が悪いため、数年に一度重機で自ら砂土を客土する
この一粒一粒の籾が秋には実りを迎える
育苗ポットは1つのハウスに1,000枚以上並べる

日本の文化として
大切な「米」

石狩市内の学校給食では、地産地消の取り組みのひとつとして、月に1日から2日、石狩市産のイエスクリーン米が使われる。

「日本は米が主食。米以外にも選択肢はあるけれど、やはりなくてはならないものだと思うので、なぜ米作りにこだわり、YES!cleanに取り組んでいるのかを伝えていきたいです」

必要不可欠なものにも関わらず、米農家の件数は減り続けている。日本の米作りの一端を担いながら、安心して生産できる環境を整え継承していくことが目標のひとつ。

米に付加価値を付けたい、というところから始まった林さんのYES!cleanの取り組み。その付加価値は、「安全・安心な食」。先代から学んだ基本と経験があるからこそ、時代に沿った新たなチャレンジもできる-。日々、真っ直ぐに作物と向き合う姿に感銘を受けた。

種籾播種機
パレットを運ぶ父・新一さん