地域の想いの結晶 「ポーラスター」というブランドを守り続けていきたい

豊平地区組合員

桑島 誠さん

北極星を意味する清田区を中心としたブランド野菜「ポーラスター」。26年間ポーラスター一筋で邁進する、5代目の姿を追いかけた

地域に残る
確かなブランド

「有明の名水」や「有明の滝」で有名な札幌市清田区有明地区。車を走らせると、札幌大球をはじめとした様々な作物の圃場が姿を見せる。その中でも、この地区で多くの生産者が作り続けているのが、清田区を中心としたブランド野菜「ポーラスター」だ。

ポーラスターは、昭和54年に宅地化が進む中、「この地区を代表する作物を」という生産者の想いから誕生した。道外出荷がメインだった当時、北の地から出荷されるほうれん草にふさわしい愛称として、「北極星」を意味するこの名が付けられた。

桑島農園では父の代から、このポーラスターのみを一筋に生産し続けている。ハウスに足を踏み入れると、エネルギーに溢れた色濃い肉厚のほうれん草が広がっており、それはラインを引いたかのように真っすぐで、高さにも乱れがない。桑島さんの職人技に驚愕する。

葉肉の厚さと、甘みが強く、えぐみの少ない口当たりが特徴。日持ちが良いこともセールスポイントの一つだ。きれいな水と涼しい気候に加え、努力と試行錯誤を重ねて品質を磨き、ブランドの確立に奮闘した父の技術も継承している。

父母、叔父と4 人で行なう収穫作業は阿吽の呼吸。ポーラスターは元々、夏場に需要がある道外向けの商品だったが、現在では地産地消が進み、市内の直売所やスーパーに並ぶほか、週に2 回ほど清田区と厚別区で、小中学校の給食に使用されている

ハウスに工夫を
施した理由

桑島さんがサラリーマンを辞め、後継ぎとして戻ってきたのは28歳の時。種まきは母、それ以外は父から学んだ。例えば土づくり。地力増進のために秋に牛糞、堆肥、有機肥料をブレンドして入れている。父が先進地 視察で学び、改良した方法だ。

また、ほうれん草を生産するうえで重要なのは、水やりだと桑島さんは話す。

「うちでは夕方に水をあげるようにしていますが、自然相手なのでマニュアル通りにはできなくて。気温変化に応じてタイミングを柔軟に調整しています」

品種も、季節に合わせて3品種を作付けする。ハウスごとに種まき時期を変えながら、収穫までの30~50日間、気候に応じての水やりとハウス内の温度調整を行なう。市内に出回るのは5月から11月頃で、市場休以外は毎日収穫し、1日160~240キロを出荷。18棟のハウスで、1ハウスにつき年3回程度収穫する。

「18棟のうち14棟は、誠が建てたんだよ。綺麗で頑丈なハウスだよ」父親の忠正さんが嬉しそうに話す。このハウスを建てる時、桑島さんが施した工夫があるという。春に張り、秋に剥がすビニールを、一人で張れるように巻き上げ式にしたのがそれだ。

「春と秋のこの作業、大変だったんですよ。身体への負担が大きいんです。収穫以外の作業は出来るだけ自分一人で出来るようにしたくて。収穫はまだまだ、両親にも頑張ってもらいますが(笑)」

建てる時は随分頭を悩ませたそうだが、作業は格段に楽になった。将来の自分のために、と笑う桑島さんだが、両親への気遣いが伝わってきた。

収穫したてのポーラスター
出荷時は丁寧に根を切って揃える

目ポーラスターを
守り続けたい

ポーラスターというブランドが確立するまでには、多くの時間と先人の苦労がある。それを間近で見てきた桑島さんに、今後の展望を尋ねた。

「自分は恵まれていると思うんですよね、農業を続けたくてもそれが叶わない方もいますから。いつか両親が畑に出られない時が来ても、パートさんを雇ってでも続けたい。農業をやめるつもりは全くないです」

もちろん、これからもポーラスターを守り続けるつもりだ。現在も畑に出続ける、父と同じように。

自分が作ったものを食べてもらえる喜びがあるから、農業は楽しい。そして、受け継いできたポーラスターの名前を、絶やしたくないという想いも強い。

農業をやめるつもりはないと一切迷いなく話す姿は、この桑島農園で、地域と共にポーラスターが輝き続ける未来を感じさせてくれた。

父の忠正さんが「宝の母さん」と称える母の愛子さん
肉厚で立派なポーラスターがびっしり
ポーラスター立ち上げから尽力してきた父の忠正さん