栽培の基礎編

1.菜園のための土づくり
作物を健康に育てるためには,まず土をつくることから始めなければなりません。それには土を30㎝位の深さによくたがやすこと(こううん)が大切です。
こううんは土をやわらかくし,土の中に充分な空気をふくませるとともに,水分を保つためにも役立ちます。しかし,一度たがやしても雨にうたれたり,踏みつけたりしているうちに土はだんだん固くなってしまいます。
土をやわらかく保つためには畑全体に堆肥をほどこすことが最も良い方法です。
堆肥とは、ワラや刈り草その他の有機物を十分にくさらせたものですが、これを施すと土の物理性が良くなるばかりでなく、適当な肥料分も含んでいるので、作物が作りやすくなります。
2.作付け計画の立案
野菜は作物によってタネまきまたは苗の植えつけに適した時期や収穫までに要する日数が異なります。また,植えつけ間隔(栽植距離)が狭く葉に日光が充分にあたらなかったり,同じ作物を続けて栽培(連作)すると生育が悪くなります。
特に,連作は同一の作物だけでなく同じ科の作物でも悪影響を及ぼしますので,あらかじめ畑をブロック割りし,前年までの栽培記録を参考に連作にならないようローテーションを組む(輪作)など,計画的に栽培する作物を選定することが大切です。
比較的種類が多く注意すべき科を以下に示しています。
ナス科 ナス,トマト,ピーマン,シシトウ,ナンバン,バレイショ等
ウリ科 キュウリ,カボチャ,メロン,スイカ等
アブラナ科 ダイコン,キャベツ,ハクサイ,コマツナ,チンゲンサイ,タイナ等
キク科 レタス,シュンギク等
セリ科 セロリ,ミツバ,パセリ等
3.タネまきとタネの選び方
野菜の中には直接畑にタネをまいた方が良いものと,苗を買って植えた方が良いものがあります。

また,タネを買う場合はふつう袋詰めになっており,中身がよくわからないので,信用のおけるお店でまく時期などを相談するのが良いでしょう。

4.土かけ
タネをまいたあと、タネの上に土をかけることをいいますが、タネを固定し、タネに水分を与えて発芽を揃えるために必要なばかりでなく、発芽した作物が倒れないように支えるためにも大切な作業です。
かける土はふつうタネの直径の2~3倍の厚さが適当です。
しかし,種類によっては土かけが厚いと発芽しないものがありますので注意が必要です。
5.苗の植え付け(定植)
(1)苗の選び方
苗を購入する場合もタネと同様に信用ある種苗店などから購入するほうが良いでしょう。
良い苗を見分けるには次のことに注意してください。

  • 茎が太くがっしりしているもの
  • 葉は大きく厚いもの
  • 節間がつまって短いもの
  • 根の張りが良いもの
(2)植え付ける時期(定植期)
キュウリ、トマト、ピーマンなどの果菜類は、いずれも高温を好む野菜ですから、気温や地温の低いときに苗を植え付けると根の発生が悪く、根のつきが遅れます。
したがって、札幌では6月に入ってから植え付けるのが無難でしょう。
(3)植え付け方
苗の植え方で注意したいことは,

  • 根についている土をできるだけ落とさないように取り扱うこと
  • 植えるまで根をできるだけ乾燥させないこと
  • 極端な浅植え,または深植えにしないこと
  • 苗の周囲の土をあまり強くおさえないこと
6.野菜づくりと肥料
私たち人間にタンパク質やビタミンなどの栄養が必要なように,野菜にもいろいろな栄養が必要です。
肥料は有機質肥料(米ヌカ,骨粉など)と化成肥料(硫安,加燐酸石灰など)に分けられ,有機質肥料は一般に効き目は遅いですが効果が長持ちする特徴があり,化成肥料は効果が早いことから一度に多くあたえると,作物が肥料負けすることがあります。
また,化成肥料だけでは土が荒れ,固くなってきますので,堆肥や有機質肥料とあわせてほどこすことをおすすめします。

作物の生育に必要な成分は,チッソ,リンサン,カリ,カルシウム,マグネシウム(クド)などの多量要素と,ホウ素,鉄,マンガン,モリブデンなどの微量要素がありますが,微量要素は堆肥や有機質肥料に含まれていますので特にほどこす必要はないでしょう。
つぎに多量要素について説明します。

チッソ(窒素)
葉肥(はごえ)とも呼ばれ,葉を大きくし緑色を濃くします。どの野菜にも必要ですが,キャベツやホウレンソウなどの葉ものには大切な要素です。
不足すると葉の色がうすくなり生育が悪くなりますが,多すぎても軟弱な生育をしたり,実ものでは果実のつきが悪くなることもあります。
リンサン(燐酸)
実肥(みごえ)とも呼ばれ,花や果実のつきをよくしたり,野菜を丈夫にする働きがあり,不足すると生育が遅れ,果実の味が悪くなります。
カリ(加理)
茎や葉を丈夫にし,病気や害虫に対する抵抗力を高め,根の発育を良くする働きがあります。
カルシウム(石灰)
野菜を丈夫に育てるのに必要な要素で,不足するとトマトの尻腐れなどがあらわれます。
また,酸性の土を中和する働きがあるのでホウレンソウには必ずほどこしてください。
マグネシウム(クド/苦土)
それほど多くを必要としませんが,葉緑素を作るのに必要で不足すると葉が落ちやすくなります。

肥料を使う場合「肥料の三要素」などを配合した化成肥料を使うと便利です。化成肥料の袋に10-8-7などのように表示してあるのは、チッソ10%、リン酸8%、カリ7%を含んでいることを示しています。

7.肥料のほどこし方
肥料を畑の全面にまいて土とまぜ合わせる全面施肥(ぜんめんせひ)と,苗ものを植える穴にほどこす植え穴施肥があります。
ホウレンソウやニンジンのようにすきまなく栽培する野菜はもちろんのこと,植えつけ間隔が離れているトマトやキュウリでも生育に応じて根が広がっていくので,基本的には全面施肥を用いるのが良いでしょう。
ただし,「根つけごえ」として過リン酸石灰などをほどこすには植え穴施肥が適しています。
また,肥料はタネまきなどの一週間前にほどこすのが良いでしょう。
8.病気と害虫
野菜にはいろいろな病害虫がつきますが、家庭菜園ではなるべくならば薬剤は使用しないで作りたいものですね。
そのためには次のようなことに注意して栽培しましょう。
① 丈夫に育てること
チッソをやりすぎると植物が軟弱に育ち、病害虫におかされやすくなります。また、カリは組織を強くして抵抗力を増すので不足しないように注意します。
② 病気や害虫に強い品種を選ぶ
③ 密植しないこと
小さい面積にたくさん植えすぎると、風通しが悪くなったり、光線不足になり、病害虫が発生しやすくなります。
④ 畑を清潔にすること
⑤ 害虫を捕殺すること

参考に野菜の主な病害虫をあげておきます。

害虫

葉、茎、根、花、果実などを食いあらす食害型のもの アオムシ、ヨトウムシ、毛虫類、ネキリムシ、ズイムシ、マメコガネ、ハモグリバエ、ダイコンバエ、ウリバエ、コナガ、ヨトウガ、ナメクジ、カタツムリ、コオロギなど
口吻でいろいろなところから液を吸う吸汁型のもの アブラムシ類(モモアカアブラムシ、ワタアブラムシなど)、ダニ類(ナミハダニ、カンザワハダニなど)、スリップスなど
根などに寄生する寄生型のもの 線虫類(ネグサレセンチュウ、シストセンチュウ、ネコブセンチュウなど)

病 気

病名 発病部位 病気の特徴 発病しやすい作物
灰色かび病 葉、花、果実 ・円い大型の灰褐色病班ができ、灰色のかびを生ずる。 キュウリ、ナス、トマト、トウガラシ、レタス
立枯病 根、地ぎわ部 ・幼苗に多い
・地ぎわ部が腐敗して倒れる
キュウリ、トマト、エンドウ、ホウレンソウ
うどんこ病 ・表面に白いうどん粉状のかびが生え、やがて灰色になる。 キュウリ、カボチャ
軟腐病 葉柄、根 ・葉柄はベタベタ軟化し腐敗
・根の中心部が軟化腐敗し、悪臭が出る
キャベツ、ハクサイ、ダイコン、カブ、ニンジン、レタス、ネギ、ジャガイモ
根こぶ病 ・根のところどころにこぶ状のかたまりができる ハクサイ、キャベツ、カブ、ダイコン